マングローブ

おひさしぶりですね.すみません,植物の博士になるには色々多忙な毎日で.

軽い話ですみません.

最近よく企業などの取り組みでも増えてきたので「マングローブ」って単語を耳にしますよね.「○○はマングローブ保全の活動に参加しています」とか.

みんなでも「マングローブ」って何か知ってますか?「マングローブ」って名前の植物があるとかもしかして思ってませんか?

マングローブ」とは実は亜熱帯から熱帯地域にかけて分布する,海水と真水(つまり河の水)が混ざり合う場所にある植物の「総称」です.

ガジュマルもタコノキも,みんな合わせて「マングローブ林」と呼ぶのです.決して「マングローブ」という名前の木が存在するわけではありません.

マングローブの植物は塩水と真水の混ざり合う(干潮の時期には干潟のような状態になり,満潮の時期にはほぼ海水に浸かった状態になってしまいます)という非常に植物にとっては特別な環境に生育しているために,色々な能力を持っています.

一番注目されるべきは「解毒能力」(本当にこう呼ぶかは知りません(すみません)).

つまり,人間もそうですが,過剰に塩分を取り込むと浸透圧で細胞がやられてしまいます.なので,マングローブ植物は非常に高い異物排出能力を持っています.

その主たる役割を果たす部分は「葉」です.

根から吸い上げた塩分を多く含む水から塩分を分離して,葉に蓄え,そして塩分を過剰に蓄えた葉は紅葉するように変色してはらはらと落ちるのです.

そうやってマングローブの植物は体から過剰な塩分を排出しています.

その解毒能力の例をお見せします.

うちは結構日本でも北の方に住んでいるのですが,ガジュマルを育てています.

ある日水をやろうと思って,霧吹きで間違ってリネンウォーターをかけてしまいました(←植物の博士になりたいやつの失敗か?).

これがうちのガジュマル君です.まだ20cmぐらいかなあ?すごく強くてもう5年ぐらい生きています.普通に花屋さんで買いました.

で,ある日気付いたんです.本当にガジュマルは強くて,葉を落とすことすらほぼないのに,葉がどんどん変色している.

これはよく見ると,葉脈から枯れています.

初めはなんでか分らなかったのですが,「あ!あの日のリネンウォーターか!」と気付きました.

リネンウォーターは葉にだけ霧吹きでかけました.

実はガジュマルの葉にある気孔(葉の裏側にある呼吸をする部分)

これはツユクサの気孔の写真ですが,実はガジュマルの気孔はこの10倍ぐらいの密度で存在しています.

つまり呼吸機能が非常に高いのです.

多分葉から大量にリネンウォーターを吸いこみ,そしてそれが維管束(植物の血管)を回り,そして排泄物として維管束(葉脈は葉に存在する維管束です)に蓄積し,毒素のたまった葉を落としたのでしょう.

これがマングローブ植物の力です.

この力と特殊な能力があるので,海水が大量に入り込む環境でも強く長く生きられるのです.

今日はここまでって事で.

植物の博士になりたい人は今が一番忙しいのです.

植物はこの春先〜夏を謳歌しています.謳歌するとこっちの取るデータの数も跳ね上がります.

調査に行ってきます.

ではまた.